【71番】藤原公任に続く「三船の才」!!大納言経信!!


ジャンル:秋
時代:平安時代 
超要約:田舎の秋風

歌の意味(子ども向け):田んぼをわたる風、きもちいいなあ。
歌の意味:夕方になると、家の門前にある田んぼの稲の葉にさわさわと音をたてさせ、芦葺きのこの山荘に秋風が吹き渡ってきた。

☟この首に関するクイズ

Q 「夕されば」の意味は?
①夕方がすぎされば
②夕方になると 

 A ②

👇語呂合わせ(覚え方)


 70番の歌と同じく、秋の夕暮れを詠んでいますが、この歌にはさわやかさが感じられます。この歌は、源師賢(みなもとのもろかた)が所有する梅津(現在の京都市右京区梅津、昔は貴族の別荘地があった。)の山荘に貴族たちが招かれた時に行われた歌会で披露されたものです。あらかじめ「田家ノ秋風」というテーマが決まっていて、それに合わせた歌が詠み競われました。

 上の句では、稲の穂にふく秋風を目と耳でとらえ、下の句では、家に吹き込んできた秋風を、肌でとらえています。秋風が「稲葉」から「芦のまろや=蘆(あし)で葺(ふ)いた仮小屋(かりごや)」に吹き渡るところには、ゆるやかな時間の流れと、それを眺める作者の目の動きが感じられます。稲の葉が揺れて伝わってくる音で、秋の訪れを知るというのは、とても繊細な感覚ですね。この歌は、悲しさや寂しさといった感情を交えずに、情景を客観的に詠んだ「叙景歌(じょけいか)」です。

 「夕されば 」についてですが、夕方が過ぎ去った、という意味ではありません。 「さる」は「~になる」の語で、進行していることを表しています。つまり、「夕方になれば」という意味です。また、「門田」とは、「家の前の田」という意味です。ちなみに、四句で「芦のまろや」と詠んでいるこの小屋は、京都の西の郊外、桂川近くにある作者の親戚の山荘です。

 作者の大納言経信=源経信(みなもとのつねのぶ)は、学問にすぐれ、和歌や漢詩・楽器にも秀でており、特に、朝廷の礼式や作法などの「夕職(ゆうそく)」について、博学であったそうです。

 作者の才能を示すエピソードとして、こんなのがあります。1076年、白河天皇が覆井川に行幸されたとき、詩、歌、管弦の3つの船を浮かべて、それぞれの道の名人と言われる人を乗せて楽しまれました。経信も招かれていましたが、遅刻して参上しました。船は岸をすでに離れていました。経信は、汀にひざまずいて、「どの船でもよろしいので、お寄せください」と言いました。『詩』『歌』『管弦』。どの船にでも乗るに値する才能を持っている自信がないと、言えないセリフです。藤原公任(55番)に匹敵する「三船(さんせん)の才」です。


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