【32番】世の中に影響を与えた一発屋!!春道列樹!!


ジャンル:秋
時代:平安時代 
超要約:紅葉のダム 

歌の意味(子ども向け):あれ?風がもみじであそんでいるよ。 
歌の意味:山の中の川に、風が掛けた流れ止めの柵(しがらみ)がある。それは、流れきれないでいる紅葉の集まりだったよ。

☟この首に関するクイズ 

Q 「流れもあへぬ」とは、「流れることができない」という意味である。〇か✖か? 

 A 〇
 流れようとしても流れきれない、という意味。
 👇語呂合わせ(覚え方)


 「山川(やまがわ)」とは、山の中にある川、という意味です。「しがらみ」(漢字で書くと「柵」)とは、水の流れをせき止めるために、川の中に杭を打って、竹や木の枝などをからませたもののことです。

 紅葉が小川に落ちて、流れをせきとめている様子を「風のかけたるしがらみ」と詠み、風を擬人化しているところにおもしろみがあります。この表現方法(擬人化)は、当時最新のテクニックとして、もてはやされ、それ以降、多くの歌人が真似するようになりました。

 ところで、この歌に詠まれている山川が、現在のどのあたりか気になります。「古今集」には、詞書として「志賀の山越えにて詠める」とあります。「志賀」というのは、今の滋賀県。京都東山の銀閣寺の北から、近江国の大津(今の大津市)へ達する山道があり、その道を「志賀越道」と言いました。志賀寺(崇福寺)へお参りする参道です。春道列樹は、その山中で美しい紅葉のしがらみを見つけたのかも知れません。残念ながら、現在、崇福寺は、跡地として、その大礎石のみしか残っていないそうです。しかし、その周辺で、「風のかけたるしがらみ」を見つけられるかもしれませんね!

 作者の春道列樹(はるみちのつらき)については、詳しいことはわかっていません。5首ほどしか記録には残っておらず、いわば無名の歌人です。しかし、「しがらみ」と「もみじ」のセット(!?)で一躍有名になり、藤原定家に選ばれて、百人一首に入ることになりました。この歌一首でヒットしたラッキーな人です。

 いわゆる「一発屋」と言うと、語弊がありますが、一つもヒットさせられない人も、世の中には多いですよね。私自身も、何かしら光るものを一つは持ちたいと思いました。


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