冬の夜空を見上げて、天の川に輝く夜空の星が美しい。冬の夜がふけていくなあ、と感じ入っている歌です。
この和歌にある「かささぎの渡せる橋」とは、七夕の夜、天の川にかかる橋のことです。多くのかささぎが翼を重ね、一年に一度、天の川に橋をかけ、織姫を彦星の元に渡らせるという伝説からきています。
その後、宮中にある御殿と御殿とを結ぶ橋や階段などを、天上に例えて「かささぎの橋」と呼ぶようになりました。
この歌は、大伴家持が冬の宮中で宿直(とのい)をしている時、降りた霜を見て詠んだのだろうと言われています。
奈良県の平城宮跡を訪れた際には、1300年前、大伴家持が宮殿で過ごした冬の夜を、想像してみようと思います。平城宮跡は、奈良市にあります。
作者の大伴家持は、武人として天皇家に仕えました。「万葉集」は、家持の歌が最も多く(473首も!)、彼が編者の一人、と言われています。繊細で優美で情感あふれる歌を得意とした人で、後の平安時代の詩歌に非常に大きな影響を与えた人です。
藤原種継(ふじわらのたねつぐ)暗殺の疑いで流罪になるなど、奈良時代後期の政争に巻き込まれたからでしょうか、42歳以降は、歌を詠んでいません。
ちなみに、カササギは、カラスの仲間の鳥です。体は黒く、胸と腹、翼の一部に白い羽が生えています。七夕の伝説では、翼を広げて天の川の上に並び、織姫と彦星のために橋になってくれます。
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